私たちは、人々が「ゴミ屋敷」と呼ぶ場所の清掃を専門としています。この仕事に就いて十年以上経ちますが、現場は毎回、私たちの想像を遥かに超えてきます。テレビで見る光景など、ほんの序の口です。ドアを開けた瞬間に鼻を突く、生ゴミと汚物とカビが混じり合った強烈な悪臭。足元でうごめく無数の害虫。一歩足を踏み入れると、何が崩れてくるかわからない、不安定なゴミの山。特に夏場の現場は、気温と湿度で腐敗が加速し、まさに地獄絵図です。防護服と防毒マスクを着用していても、その過酷さは言葉では言い尽くせません。肉体的な大変さはもちろんですが、精神的な負担も大きい仕事です。依頼者の方は、深い罪悪感や羞恥心、絶望感を抱えています。私たちは、ただ黙々とゴミを運び出すだけでなく、そうした依頼者の心に寄り添い、決して責めたり、驚いた表情を見せたりしないよう、細心の注意を払います。「こんな状態にしてしまって、すみません」と涙ながらに謝る方に、私たちはいつもこう言うのです。「いいえ、ここまで一人で抱えて、本当に大変でしたね。今日でリセットして、新しい生活を始めましょう」と。この仕事の最大のやりがいは、まさにその瞬間にあります。ゴミが運び出され、床が見え、窓から光が差し込んだ時の、依頼者の方の表情。それは、安堵と、驚きと、そして未来への希望が入り混じった、何物にも代えがたい表情です。作業が全て終わり、「ありがとう。これでやっと人間らしい生活ができます」と震える声で言われた時、この仕事をしていて本当に良かったと、心から思います。私たちは、単なる清掃員ではありません。依頼者の人生の再スタートを、全力でサポートする伴走者なのだという誇りを持って、日々現場に向かっています。もしあなたが一人で悩んでいるなら、どうか勇気を出して声をかけてください。私たちは、あなたの秘密を必ず守り、必ず力になります。