ある晴れた日、ふとキッチンの隅に目をやると、そこには黒い小さな点が、まるで意思を持っているかのように、一列に並んで行進していた。アリの行列です。最初は数匹だったはずが、気づけば何十、何百という数に膨れ上がり、家の中を我が物顔で練り歩く。この、蟻の駆-除という戦いを始める前に、まずは敵の正体と、その習性を正確に知ることが不可欠です。日本の家屋に侵入してくる蟻には、いくつかの種類がいますが、代表的なのは、黒くて小さな「イエヒメアリ」や「トビイロケアリ」、そして、近年被害が増えている、非常に小さく淡褐色の「アルゼンチンアリ」などです。彼らに共通しているのは、驚くほど小さな食べかすも見つけ出す、非常に優れた嗅覚を持っていること。そして、一匹の働きアリが餌を発見すると、巣に帰るまでの道のりに「道しるべフェロモン」と呼ばれる化学物質を分泌し、それを辿って、仲間たちが次から次へと餌場へと殺到するという、高度な社会性を-持っていることです。これが、アリの行列ができるメカニズムです。つまり、私たちが見ているアリの行列は、氷山の一角に過ぎません。その背後には、壁の中や、床下、あるいは庭の土の中といった、私たちの目が届かない場所に、女王アリを中心とした、巨大なコロニー(巣)が存在するのです。目の前のアリを、ただスプレーで駆除したり、雑巾で拭き取ったりするだけでは、根本的な解決にはなりません。巣の中にいる女王アリが、次から次へと新しい兵隊を産み続ける限り、戦いは永遠に終わらないのです。蟻駆除の本当の目的は、この見えざる敵の本拠地、すなわち「巣」を、女王アリごと完全に殲滅することにあるのです。